「花や鳥は・・・」

2002年≪生命・花≫ ミックス・メディア 60.6×72.7cm

 

花や鳥はあまりにも美しいので、若い頃の私は意識的に目をそむけ、描くことを遠慮してきたように思う。彼らの美しさに比べたら、私自身の描く絵などは足元にも及ばないという恐れがどこかに有ったように思う。花鳥は遠くにあって想うもの・・・・・・であったのだ。しかし、私も彼らと同様のアートパフォーマンスをする芸術家として、そろそろ仲間に加えてもらおうかな・・・・・・と近頃思えるようになってきた。加齢のせいか・・・・・・。

 

 本年1月24日をもって還暦に達した。花と同様、赤色のマント(チャンチャンコ)所有者となったのだ。花の心はまだしかとわからないのだが。40歳の頃、花や鳥、猿や魚、自然をもふくめて人間以外の全ての者は実はその身体をして支持体とする芸術表現者だということは薄々感じていた。彼らが作りだす美は人間が描く弱々しい芸術作品ではなく、生命、命、生存がかかった必然の戦いの中でのリスクティキングそのものであるという重さも知っていた。だから不用意には踏み込めなかった。色彩・形・ムーブマン・量など人間のことは芸大学生時代から打ち込んできた。秋の独立本展に於いてもこの何十年間モチーフはすべて人間であったし、人間を描くことによって人間を知ろうと心がけてきた。いよいよ花か。いよいよ鳥か。という所にさしかかっている。

 

 ギリシャ以来人間中心主義の気風は人間のヒューマニズムという形をとって全世界に広がっている。しかしその結果、人類が打ち立ててきた哲学はこれで良かったのだろうか。視点を変えれば間違いだらけだったのではないのだろうか。これからは花や鳥に聞かなければならないだろう。

 

 花や鳥は描かれても描けないだろうとたかをくくっていたが、その心の美もふくめて、美とは生存権なのだよと言っている花鳥を師として、その本質を聞き出さなければならない時代にさしかかってきたと言えるのだろう。

 

(アート・トップ 2003年2月号 No.190掲載)