『退任記念展 絹谷幸二 生命の軌跡 ARS VITA ESTA・VITA ARS ESTA』のご案内
絹谷幸二は1974年当時史上最年少で安井賞を受賞、2001年には日本芸術院会員に就任と最前線で制作を続けてきました。また、20年以上に渡り東京芸術大学絵画科油画で教鞭をふるい、作家としての姿勢を背中で示し、長年に渡り学生達に多大な影響を与えてきました。
本展は、絵画作品、立体作品など約50点を一堂に集め、初期の油彩から、大学時代の卒業制作≪蒼の間隙≫、イタリア時代のフレスコ習作など、テキストなどをからめて展示するほか、その鋭い眼光が捉えた自らの顔≪自画像≫の変遷も追いかけます。安井賞、毎日芸術賞受賞という名誉に溺れることなく、独自のスタイルを激変させた青春時代。東京芸術大学から巣立ちやがて教鞭をふるうことになった絹谷の軌跡などを、同じ学び舎の美術館において辿る試みとなります。また、作品展示に留まらず、講演会を通して画家の生のメッセージも人々に届けます。
本展は絹谷の若い時代の作品や知られざる体験談、彼の教育者としての思想などを学生だけではなく学内外のより多くの人々と共有することで、「生きた教育の場」の創出を目的としており、その意味において絹谷による東京芸術大学での最後の授業といえるでしょう。
【会場】東京芸術大学大学美術館3階 展示室3・4室(3階展示室)
(http://www.geidai.ac.jp/museum/)
〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8
TEL 050-5525-2144
【開館時間】10:00~17:00(入館は16:30まで)/入場無料
【休館日】2010年1月12日(火)
主催=東京芸術大学美術学部/東京芸術大学美術館
助成=公益財団法人 野村国際文化財団
協賛=財団法人 ユニオン造形文化財団/吉野石膏株式会社
協力=株式会社 一柳アソシエイツ/株式会社 天満屋
■講演会のご案内■
『想像力の鍛え方』
講演:若尾文子(女優)
石井竜也(ミュージシャン)
大高保二郎(早稲田大学文学学術院教授)
一柳良雄(株式会社一柳アソシエイツ 代表取締役社長&CEO)
絹谷幸二
※ 中村吉右衛門は都合によりキャンセルとなりました。大変申し訳ございません。
【日時】2010年1月11日(月・祝)14:00~
【会場】東京芸術大学 美術学部中央棟第一講義室
【定員】160名(先着順)
聴講無料
■作家による作品解説■
【日時】1月5日(火)、10日(日)、16日(土)、17日(日)
各日とも14:00~
【集合場所】東京芸術大学美術館 展示室3、4室(3階展示室)
参加無料
■半生と画業をまとめた初の単行本発売お知らせ■
『生命を刻む壁屋~画家、絹谷幸二の軌跡』(仮題)/石川健次著
古都・奈良で生まれてから東京芸術大学教授退任までを細かく取材。
学生時代から現在までの作品、50点(カラー掲載)と共に画家の人生と作風の変遷をたどる。
画家の人生を知ることで、いっそう深く作品を知ることができる一冊。
A5変形・264ページ(カラー32ページ含)
【価格】2,000円(税込)
【発売予定】2010年1月
【発行】アートヴィレッジ
※本展覧会にて先行販売、全国書店・オンラインブックストアにて注文、購入可能
アート・トップ2005年1月号 NO.201掲載
「身体が空中に・・・」
身体が空中に浮遊することなど、スーパーマンか孫悟空でもないとできないことだが、私は時折ふと世間から浮き上がることがある。一九七一年三月、ヴェネツィア・サンタルチア駅に初めて降り立った時の経験は今日でも鮮明に思い出される。
当時私は新婚の妻を伴い日本を発って二日目、ミラノから列車でヴェネツィアへと向かった。長旅の疲れもあったのだろうか、暗い駅舎を出て運河手前の階段上で、私の身体は確実に三〇センチメートルは浮き上がった。人もまだ動植物の域を脱していないのか・・・・。モモンガ状態となって、一瞬だが、重力が空中に放電し、合気道の気に触れたのか、訳の分からない力が私を押し上げた。
学生時代からスキューバダイビングで透明なケラマの海や、モルジブで水中の断崖絶壁を滑空していることもある。水に支えられていることも忘れるほどに中性浮力に慣れ親しんでもいる。その残像が突然現れたのか、はたまた、夢では時々浮き上がり、天空を滑空していることもあるので、この時夢と現実が混濁したのかも知れない。兎に角、浮いたのであった。
このことがあって以来、私の画業に於ける筆致は色彩を得て、自在に動くようになった。かって私をつなぎ止めていた我が国の美風といわれる勤勉さや、自己犠牲、因縁や、一生懸命頑張るといった悲壮感から抜けだし、それ以上の自由闊達な衝動が身を包むようになった。
まさにイタリアの気風が私をとりこにした瞬間だった。



